365セブンスウェル🌿🌈

旅とデザイン、傍らにコーヒー。

『ぼけますから、よろしくお願いします。』

わたしの祖母は今年82歳になった。


母子家庭で育ったわたしにとって祖母は、 母親のような存在でもあるほどに お世話になった人だ。
わたしと弟、さらには 母の兄夫婦の子たちの面倒さえ見ていたものだから、孫4人。 皆おばあちゃんっ子だ。

 

 

母が25歳くらいの時に祖父は病気で亡くなっている。
わたしも幼かったので祖父の記憶はほとんど無いのだが、『 自分の娘が産んだ子』というのは やはり特別なことのようで、 孫の中でも一番に気にかけてくれていた事は祖母からよく聞かされ ていた。


 若くにして愛する人に先立たれた祖母。
父親がいないわたしたち姉弟と、 養っていくために働きに出かけるわたしの母を、 懸命にサポートしてくれた。

 


”まわりの家族と差を感じさせない生活をさせよう” と、よく旅行にも連れて行ってもらったし、 欲しかったモノは与えてくれた。


普段は朝5時出社のパートに出掛け、 帰ってきてからは家事と孫の世話。  

欠かさずに毎日家を掃除し、 どんなに忙しくても豪華なご飯がそこにはあった。 料理上手な祖母の作るお弁当は、 中学校でも高校生になってからも、友達が褒めてくれていた。

 

 


孫を甘やかす部分もあれば厳しい一面もあり、
勉強や時間にとくに厳しかった祖母を、思春期の頃はひどく 鬱陶しく思っていたこともある。
テストの点が悪ければ機嫌が悪くなるし、 夜遅くに帰宅すれば激怒。
長女としての期待も大き過ぎて、かなりストレスな時期もあった。

何日間も口を利かなかったこともある。

 

頑固で気難しい祖母だが、それでも今は色んな感情をひっくるめて、面倒を見てくれた事を、ありがたく思っている。

 


そんな風に育ってきた わたしたち孫も今は皆結婚し、親元を離れ それぞれの場所で生活をしている。
実家で暮らしているのは 母と祖母と愛犬。


祖母が80歳になり、 わたしが実家を離れて3年ほどたった頃から、 母から祖母の言動や行動のことを耳にすることが少しずつ増えた。


・耳が遠くて会話に支障をきたすこと。

・話したことを、次の日には忘れてしまっていること。

・出掛けたはずなのに、 目的地を忘れてしまって迷子になってしまったこと。

・定年を機に、家事一本の生活を何十年続けているはずなのに、まるで今も仕事に行っているかのような発言をし始めること。

・掃除がおおざっぱになったこと。

・料理の作り方を忘れてしまったこと。

 


信じたくないけれど、認知症のはじまりだった。
病院での診断結果では、まだ 軽度 の症状だということだったが
たまに実家に帰るわたしでも、 認知症が少しずつ進行していっている様子は伺えた。

 

あんなに気丈だった人が、、、という、 悲壮感や不安感を越してくる もうひとつの感情がイライラや怒り。


祖母の認知の症状を、 たまに会う程度のわたしでさえ感じるが、
一緒に暮らしている者にしか分からない、複雑な気持ち とゆうものは計り知れないと思う。

それは母だけに言えることではなく、 祖母も母に対するストレスはあるだろう。

 

母が祖母の事で泣いて電話をかけて来た日があり、これからの事を悩んでいた時があった。

 

 

そんな時に偶然見つけた。

 

「ボケますから、よろしくおねがいします。」

 

ぼけますから、よろしくお願いします。 [DVD]

ぼけますから、よろしくお願いします。 [DVD]

  • 発売日: 2020/11/27
  • メディア: DVD
 

あけましておめでとうございます。
今年はぼけますから、よろしくお願いします」
と母は言った──。
認知症と診断された母85歳、初の家事に挑む父93歳。
時に涙で撮り続けた超高齢夫婦の介護の日常は、
ほっこりする愛と絆で溢れていた。
娘が見た老老介護のリアル。」

 

広島と東京で離れて暮らす両親と、一人娘。

その両親の生活と老いゆく姿を、娘の直子さんが記録し続けた、ドキュメンタリー映画となっている。

 

わたし自身こんなに早く、祖母の認知について考える日がくるなんて思ってなかったので、この映画を見つけた時はなんだか、今見なきゃいけない!という使命感に駆られた。

 

 

このドキュメンタリーは、そこかしこにある、認知症にまつわる話を映像化した生温いストーリーではない。

 

リアルな認知症が記録されている。

 

あんなに母親だった人が、駄々をこね、聞く耳を持たず、泣き叫ぶ姿。

人が変わり、"死にたい"とさえ口にする。

 

それはもう、目を背けたくなる程の現実。

 

 

 

その後に直子さんが語っていた

ホンネを言えば、私は今の母をもう、努力しないと愛することができません。ひどい娘だとは思いますが、今の母を心から愛するには努力が必要だと、認めざるを得ません。昔の大好きだった母の思い出が、今の壊れてしまった母に上書きされてしまうことが嫌で、今の私は、母と真剣に向き合うことから逃げている、適当に受け流しているのだと思います。そう、自分が傷つきたくないから……。

 

とゆう言葉が、今のわたしの母に重なって

何とも言えない気持ちになった。

 

ぼけますから、よろしくお願いします。

ぼけますから、よろしくお願いします。

  • 作者:信友 直子
  • 発売日: 2019/10/24
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 

そんな葛藤の中でも、

思い出や感謝を頼りに、忘れゆく母にそっと 手を差し伸べる父と娘の姿。

そんな"光"が、この映画にはあります。

 

 

様々な感情を行き来させる認知症

わたしの母にもこの映画を見る様にススめ、これから祖母に対して、柔軟な対応をとっていこうね と、 母と語り合いました。

 

 

 

 

 


祖母の認知が始まって間もないころ、家族を温泉旅行に連れて行った事があった。愛犬も一緒に。

その旅行から帰る道中、祖母はわたしに

「ありがとうねぇ!ばぁちゃん、今日の事は絶対に忘れんけな!温泉連れて行ってくれた事、絶対に忘れん!」

と真剣に、目を見つめながら言ってくれた。

あの時祖母自身、自分に言い聞かせている様にも見えた。

 

 

思い出話として祖母に、その時の旅行の話を最近してみたが、祖母の記憶からは無くなっていた。

 

認知症という病気がそうしてしまう。

忘れたくない記憶をも、まっさらにしてしまう。

 

それでも祖母の記憶にわたしとゆう人間は、まだ居てくれているのだ。

 

 

これからどんな事が待ち受けているのか、

どんな感情を祖母に向けてしまうのか。

分かってはいても、ツライ状況に直面してしまう事がきっとあるとおもう。

 

 

それでも祖母を大事に思う気持ちは事実で、そこに耐えられない事はなんて無いと思う。

 

だってわたしは祖母の孫なんだから。

 

 

 

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