タイのサムイ島に来ていた。一応新婚旅行という名目で来ていた ここタイでの旅も終盤を迎えていたその時、 わたしたちは離婚話にまで発展する喧嘩をしていた。 今思い返せば、 何が理由でそこまでの喧嘩になっていたのか思い出せないくらいに は、おそらく しょうもない理由だったのであろう。
サムイ島の淡い水彩ブルーの海が目の前に広がる 吹き抜けのダイニングレストラン。
南国の潮風を感じながら食事を楽しむ家族や、 波の音をBGMに珈琲を飲みながら読書する人。
その下のビーチに用意されているソファ席で寛ぐ欧米人カップル。
そんな柔らかい雰囲気の中、 般若の如く険しい顔で海を眺めている日本人の男女。 それがわたしたちだった。
空気が悪い二人を店員は察したのか、 案内された席は店の端のカウンター席。 怒鳴りあっても全然OKよ!とゆうくらいに、周りに人は居ない。
吹き抜けなので勿論窓などはなく、 目の前は海でロケーションもバッチリなのだが、 スコールが降った時は席を移動しなくてはいけないだろうと想像さ せる程に、雨よけが簡易的で小さい。
だが移動の心配は今のところなかった。
なぜなら、 このレストランに来る前に既に激しいスコールが通っていたからだ 。簡易的雨よけ部分に、たっぷりと雨水が溜まっていた。
喧嘩していると言えど、 何をオーダーするのかを決めなくてはならない。 仕方なく必要最低限の会話をし、 その後はお互い意固地にだんまりを決め込む。
オーダーした料理が来ても『美味しそう!』 を共有することはなく、黙々とマルゲリータを口に運ぶ二人。 与えられたモノを口に運ぶだけ。まるで家畜だ。 もしやどっかの魔女に豚に変えられたんではないか!?と心配し、 自分の鼻を確認してみたけど、 元々上向きの豚鼻だったことに今一度気づいて凹んだだけだった。
それはそうと、同居人の態度も気に食わなかった。
絶賛喧嘩中にもかかわらず、呑気に海を眺め、 キンキンに冷えたドリンクで喉を潤し、『 このマルゲリータ美味しいなあ・・・』などと呟いている。
こっちはあんたのその減らず口に辟易とし、 なんにせいつも論理的に意見を纏めてくるその頭の回転の速さにま た怒りを覚え、 挙句の果て自分の豚鼻に嫌気もさしているというのに!!!!!
存分にこの洒落たレストランを楽しむその姿に猛烈に腹がたってき た その時であった。
バシャーーーーーーーン!
…一瞬 何が起こったのか分からなかったのだが、 何かが上から降ってきたことは分かった。
隣に座っていた同居人と目を合わせると、彼はびしょ濡れだった。 …なんなら自分もほんの少し濡れている。
頭上を確認すると、簡易的雨よけが崩れている。
それでようやく、自分たちに何が起こったか理解した。
簡易的雨よけが過ぎて、 スコールでたっぷりと溜まってしまったその雨水の圧力に力尽きた のであろう。大量の雨水がわたしたち(主に同居人)に降り注いだ というわけだ。
起こってしまったことに気づいてしまったとき、 笑ってはいけないと思った。 さすがにびしょ濡れの同居人に同情もあったからだ。
しかし周りを見渡すと店員も堪えきれず少しワロとる。勿論、 駆け付けてくれた店員さんはものすごく申し訳なさそうに対処して くれていたのだが、遠くにいる店員皆失笑。
それを目撃してしまって、 喧嘩中でだんまりムードだった私も思わず笑いながら、「ちょ、🙂 大丈夫…?笑」とだけ声をかけてみた。
びしょ濡れた本人は内心驚いているにも関わらず、 喧嘩中のテンションが尾をひく"まぁ…濡れたねぇ…"で反応薄め。
冷静沈着を保とうとするけど、 何をどうしてもびしょ濡れの本人を目の前に笑いを隠せなかったが 、新婚旅行中にくだらない喧嘩をしている事に神様が呆れて、罰を下したとしか思えなかった(主に同居人に)。
結果 お互いの喧嘩モードは終了。
席の移動や料理の取り替えもしてくれ、 その後は良い時間で過ごせた事には神様に感謝なのだが、
こんな雰囲気の良いレストランで、何故か わざわざ引き締まってもいない上半身と乳首をあらわにしている人 と一緒にゴハンを食べているのが、 世にも不思議で仕方なかったのは言うまでもない。
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